三浦しをん『愛なき世界』初読の感想

 三浦さんの小説は初めて読みました。きっかけは知人からの勧め。自分自身が本村さんと同じく理学部生物科学(院生ではなく学部生ではあるが)に所属していること、勧められた当時意中の相手に振り向いてもらえずにいたこと、その相手が農学(「本村さん」の専攻と同じく生物系)で博士課程に進もうとする研究一筋の人であったこと。このような点で登場人物と自分とを重ねて小説に没入できるだろう、このような知人の計らいがあったと思われます。

 このブログでは自分の感じたことをつらつら書き残していく目的で始めました。したがって、未読者に対するネタバレの配慮や、逆に梗概を示して筋道立てて進めるということはせず、高速バス乗車中の暇な時間を利用して思いつくままにやっていこうと思います、お願いします。

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 さて、読み終えてみて今感じていることは、「大学って捨てたもんじゃない!」ということ。

 この小説では、研究室内でのささやかな日常や暖かい人間関係が軽いタッチで描かれています。

 例えば、ソフトボール大会や学生実習の服装選びの挿話、松田先生の茶目っ気に満ちた言動にはつい微笑んでしまいました。さつまいも掘りのくだりは、実際の研究現場でこんなことあるだろうか、とも思ってしまいましたが、まあそれは小説の中の世界として、諸岡先生の可愛らしい性格が表れていてほっこりしました。

 また、本村さんが博論研究で行っていた四重変異体の研究で行き詰まったとき、元気のなさを察知した研究室のメンバーが飲みに連れ出し、話を聞くシーン。こんな先輩がいたら心強いだろうなと思うと同時に、本村さんの不安定な感情の凹凸にはまりこんで話を聞こうとするメンバーの気遣いに心を打たれました。

 私が想像していた研究現場、、、無機質、単調、ぎらつく蛍光灯の下、論文消化と実験に明け暮れる。そういった場所は、とお豆腐メンタルでデカダンスに陥りがちな自分には向いてないと感じていましたが、(もちろん各研究室の雰囲気にもよるのでしょうけど)小説に描かれる人間愛、支え合い溢れる空間であれば、研究生活を維持できるのではないか、そのように感じ「大学って捨てたもんじゃない」と思ったのでした。

 私、高校時代には将来研究職に就こうと思い、理学部への進学を決意しました。

・・・未完