「だんだん成長するとともに、われわれの中には、恋愛は決して自分の頭の中だけで考えているものではない、つまり、相手の意思、相手の全精神生活と自分の精神生活とがそこでめぐり合って、ぶつかり合って、相手からとるべきものをとり、自分から与えるべきものを与えなくては恋愛は成り立たないということに思い当たるのです。」
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失恋の最中、無気力に立ち寄った古本屋で見つけたエッセイ。三島の恋愛観を完全に理解しているわけではないですが、自分自身の価値観と向き合い続けて来た失恋生活を経て、自分以外のそういったことへの視点を知りたく、タイトルを見て購入。
筆者のいう恋に恋する段階では、自分が恋している人はいつか自分に恋するはずだと考えがちで、これは当人の想定の中だけで進行する、苦しみを知らない幸福な段階であるということです。そして、想定の世界から抜け出し、他者の人生との関わりとして処理することができるようになって初めて「初恋」に至るのです。
この節を読み、自分の失恋に関して自分の価値観を相手に押し付けていなかったか(自分だけの考えで恋愛を進めていなかったか)を振り返ってみました。...。そして、このように客観視することで、私自身たった今、ようやく恋に恋する段階から抜け出すことができたのかもしれません。